共同研究の概要
研究方針
当講座では、下図に示すNEXCO西日本グループの技術開発体制のうち、現場に直結した実務的課題と大阪大学の高度な基礎技術とをマッチングさせることによる基礎研究成果の早期実践を目指す上で、NEXCO西日本グループと大阪大学の産学連携による技術交流における「
現場ニーズの収集・整理」、「
大学シーズの調査・理解」を通じたニーズとシーズのマッチングを担っています。また、マッチングだけではなく、NEXCO西日本グループと大阪大学が一体となり課題解決に取り組むことによって創出される新しい課題を克服するために、
技術イノベーションを起こし続けていくことを目標としています。
研究テーマ
当講座で現在取り組んでいる重点テーマは「道路整備と保全」と「災害対応力の強化」です。これらはNEXCO西日本グループが日々取り組んでいる実務であり、実務を如何にして効率的に、効果的に、適正性を持って行うことができるかを探求しています。その際、大学の高度な基礎技術(AIを用いた技術支援、ビッグデータ解析、新しい検査技術、マネジメント手法など)を幅広く調査し、土木分野の技術に限らず、他分野の技術であっても、適用可能性がわずかでもあれば実務で活用しようと試みています。以下に、「道路整備と保全」と「災害対応力の強化」で対象としている実務の一部を紹介します。
道路整備と保全 (項目をクリックで詳細を表示)
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必要なネットワークを計画的、かつ着実に整備していくことにより、自動車交通の混雑緩和による快適性や安全性の向上のみならず、地域間の交流や連携強化へとも繋がります。NEXCO西日本グループでは、高速道路ネットワークの整備促進に努めています。同時に、利便性を向上させるために、スマートIC(ETC専用の簡易インターチェンジ)の整備も進めています。
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高速道路を将来にわたって健全な状態に保持していくために、点検の実施、点検結果に基づく診断、補修計画の策定、補修の実施、点検の実施へのフィードバックを実施しています。さらに、この点検・補修PDCAサイクルを確実に実行するために「保全事業システム」を構築し、継続的な改善を図りながら運用をしています。保全事業システムの確立のためには、非破壊検査技術を用いた点検の支援、AI・ビッグデータを活用した変状判定や健全性診断の支援などが欠かせません。
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照明設備や情報板などの道路付帯物においても道路構造物と同様にPDCAサイクルを確実に回し、高速道路の運用に支障が生じる事態を未然に防止しています。道路構造物との違いとして、多種多様な設備で構成されること、設備の寿命が比較的短いことなどがあげられます。そのため、設備の更新、ワイヤー等による落下防止対策の実施、被害が想定されない場所への移設を計画的に実施しています。具体例として、ジェットファン(トンネル内の換気設備)は吊金物を増やして落下防止に努めています。さらに、ジェットファンの更新に合わせて吊金物への負荷が小さい軽量型ジェットファンへと取り替えを実施しています。また、老朽化による更新にあわせて、LED照明やマルチカラー情報板などの最新設備を導入し、省エネや視認性の向上にも取り組んでいます。
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車両総重量の増加は道路の劣化を進行させる要因となっているため、重量超過等の違反車両への取り締まりを徹底しています。専門部隊による取り締まりによって、重量超過している車両と重量超過していない車両の判別を誤ることなく、違反車両には積載物の軽減や通行の中止などの厳格な措置命令を実施するとともに、特に常習的・悪質な違反者に対しては警察への告発など厳しい対応を図っています。
災害対応力の強化
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高速道路の早期復旧にあたっては、情報の収集・発信拠点となる「災害対策本部」を災害規模に応じて設置し、本部を中心にグループ会社も含め、指揮統制の取れた体制を構築することが重要となります。そこで、訓練等によって得られた課題についての対策を講じるなど、災害対応計画を継続的に見直しています。2017年7月の九州北部豪雨では、高速道路および周辺地域の被災状況を迅速に把握するため、防災ヘリやドローンを活用し、上空からの情報収集に努めました。被災状況を踏まえ、急変する気象に対応可能なように、高速道路が通過する自治体を対象に特別警報が発表された場合には防災体制を強化するといった災害対応計画の見直しを行いました。
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地域住民の安全・安心の向上を図るため、2018年までに西日本の全24府県、陸上自衛隊、独立行政法人国立病院機構災害医療センターおよび同法人大阪医療センターと大規模災害時の相互協力を定めた災害協力協定を締結しています。加えて、2018年1月に関西電力と災害協定を締結し、連携強化を進めています。平時においては連携訓練、連絡会議、災害対応研修を連携して実施し、災害時においては相互に情報を提供するなど、災害発生時に円滑な相互連携協力を可能としています。また、グループ全体や関係機関と計画的に防災訓練や災害図上訓練(DIG:リスクコミュニケーションの一種)を実施し、地震などの自然災害の発生時や通常起こり得る交通事故などを想定し、迅速かつ的確な対応ができるよう取り組んでいます。
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豪雨や地震などの自然災害によって斜面の崩壊が発生します。斜面への対策を実施すべき箇所の抽出、崩壊の予測、降雨による通行止めの実施・解除判断の精度向上のために、無線センサを活用した斜面災害検知技術の開発に取り組んでいます。設置・撤去・メンテナンスが容易な無線センサを用いて斜面の含水量や地下水位、地表面変位などをモニタリングし、斜面の崩壊メカニズムの解明や異常の早期検知を可能とするようなシステムの開発です。
また、盛土の安定対策工法の開発にも取り組んでいます。最新の盛土補強工法として、排水と盛土補強を同時に可能とするような補強工法(SDPR工法)が開発されています。
研究内容
- 非破壊評価法(関連する研究論文はこちら)
RC床版の維持管理システムを構築することを目標として、道路橋RC床版に生じる損傷特性の抽出、各損傷特性に応じた非破壊検査手法の適用性の検討、補修工法の効果を確認するための実験的検討を行っています。
- 橋梁マネジメント(関連する研究論文はこちら)
更新/修繕/補修計画の立案のために構造物の劣化予測、予測に基づくLCC計算などを行っています。
- 舗装マネジメント(関連する研究論文はこちら)
排水性を有する高機能舗装のマネジメント手法に関する研究を行っています。
- 斜面防災(関連する研究論文はこちら)
降雨時の通行規制の開始や解除に関する研究、斜面モニタリングによる斜面の異常検知、崩壊予測に関する研究を行っています。
研究成果