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CONTACT US「大阪大学NEXCO西日本高速道路学共同研究講座」平成29年度研究報告会を実施しました。
日時:平成31年1月9日(水)14:00~17:30
場所:西日本高速道路株式会社
平成29年度の共同研究の成果報告会を実施しました。報告会は2部構成で、前半は研究成果の報告を、後半は「ニーズとシーズのマッチング」を主テーマとして、会社からは高速道路の保全における現状と課題を、大学の先生方からは研究の最新動向をお話いただきました。
竹國本部長による開会の挨拶です。本年度の多数の自然災害に関するお話や、これまでの大学と講座の共同研究の成果についてお話いただけました。
田山招へい教授に共同研究講座の概要説明、および、これから先の共同研究講座の目指すべき姿、研究方針などをご説明いただきました。その後、櫻谷招へい研究員と小濱特任准教授に平成29年度の研究成果の一部と今後の研究計画をご報告いただきました。櫻谷研究員には自らの博士学位の内容を、小濱特任准教授には自らのご専門のマネジメントに関する共同研究の成果を報告していただきました。
講座の開設から昨年度までの約7年間メンター教授として講座の発展にご尽力頂いた奈良名誉教授に、これまでの講座の発展の経緯と、これからどのようなことに目を向けていくべきかといった貴重なお話をしていただけました。
第2部のはじまりとして、本社保全サービス事業部の加冶次長に、高速道路を保全していくにあたっての現在の状況と課題をご紹介頂きました。会社が必要とする技術を大学の先生方に聞いて頂くことにより、様々な技術の提案、共同研究の提案をしていただけました。
堤招へい研究員ご自身の研究テーマに関して、これからどのように研究を進めていくかの報告をしていただきました。これまで講座のメンバーとして博士学位を取得してきた平川氏、宮田氏、櫻谷氏に続き、4人目の博士学位取得を目指して邁進していくことの決意表明がなされました。
続いて、大学の先生方からの最新の研究動向をご説明いただきました。1番手は、今年度から講座のメンター教授として非常にお世話になっている鎌田教授でした。弾性波を用いた非破壊診断技術を、私たちにもわかるように簡単にご紹介いただけました。ハンマーによる点検実施と同時に診断を行えれば、詳細調査のための1次スクリーニングに使えたりするのではと考えました。その後、電磁パルス法によってより正確な調査が実施できればと考えます。また、1次スクリーニングの段階においては、より簡易な検査機器によって実際の点検現場で試行的にデータを集めることができれば、大量のデータを用いた検証・分析も可能となるのではと感じました。(ただしこのように取得したデータは、弾性波の入力として鋼球の大きさが重要だということを考えると、IBMのいうビッグデータの性質を表す4Vの4つ目、veracity;正確性の部分でかなり苦しいようにも思えます。)
貝戸准教授からは、ビッグデータを活用してマネジメントにどのように活かしていくべきかであるかのご説明をいただけました。ビッグデータの活用と言っても、データを扱うフィールドによって性質は全く異なります。土木のフィールドにおいて考えるべきことや、土木技術者の経験に基づいた分析が何よりも重要だということをご説明いただけました。大量のデータを用いた分析においては、これまで重要視してきたアンサンブル平均、時間平均といった平均値の議論のみならず、分散に着目した個別のリスク管理が重要になるのではと考えました。
小泉助教からは、のり面監視におけるモニタリングにおいて、何を見れば良いのか?に関する最新の研究結果を紹介していただけました。土中の水分量を監視することによって、のり面表層崩壊の危険性について言及できるとのことでした。私たちが管理するのり面は西日本全域に存在し、のり面ごとに特徴も大きく異なるため、「監視する土中の水分量が具体的にどうなれば危険であると言える」といったような閾値をのり面ごとに設定していかなければなりません。現在私たちはnewronによってのり面のモニタリングデータを大量に取得し始めています。このデータをうまく活用し、閾値を決定していく必要があると感じました。
今年度から大阪産業大学に移られた小田教授とも継続して共同研究を実施しております。小田教授からは、豪雨による通行規制や解除の基準を定めるために土中の水分量を表す指標である体積含水率に着目すること、また、その変化の将来予測を実施するための方法としてデータ同化技術が有効である旨をご紹介いただけました。IT技術の革新や、IoTの普及によって獲得されるデータが膨大になったこと、そのデータを分析するためのコンピュータの性能が著しい向上を遂げたこと。これらを考えると、観測データが増えることによってこれまでの予想を少しずつ更新していくといったベイズ統計学の考え方を導入したデータ同化はより現実的で実用的な技術であると感じました。獲得できるデータ量が膨大になり、それを処理するコンピュータも大幅に性能が向上した一方で、それを扱うべき私たちはどれだけ理解できているのか、理解しようと取り組めているのか、考えされられることになりました。
報告会終了後に、懇親会を行い、様々な議論を交わすことができました。
お忙しい中、貴重なお時間を本報告会に割り当てて頂き、さらに最新の研究動向もご紹介頂いた先生方に感謝申し上げます。また、いつも伸び伸びと共同研究を実施できるようにと、見えないところで支えてくださっている本社技術部の皆様方、研究と実務を結びつけるためにと報告会に参加してくださった本社の皆様方、本当にありがとうございました。